円環少女 (角川スニーカー文庫)

円環少女 (角川スニーカー文庫)
 長谷さんの久しぶりの新作。評判は良いのですが寡作な人です。私にとっては「楽園」は可もなく不可もなく、「フリーダ」は結構好きでしたが不思議と読み返すことはほとんどなし、でした。どこか噛み合いそうで噛み合わない。
 もう一度読み返してちゃんとしたレビューを書こうかとも思いましたが、いまいち気力がわかなかったのでとりあえずの雑感だけ。今回に限らずですが[book]カテゴリは全部雑感のみです。しっかりまとめた感想はそのうち[review]にでも書く予定。

 うーん、悪くはなかったです。前評判の分だけマイナス補正がつよくなっているんだろうか。金銭分の価値は十分あると思うし嫌いではないんですが、どうもすっきりしない印象でした。最初に場面がころころ変わって状況がつかみ難い、人が多くて感情移入できない、文章が一部雑、魔法使いの立ち位置や係官の立ち位置がはっきりつかめない、くらいが感じたマイナスファクターでしょうか。あとは、絵が浮かばない。これは比喩的表現であって私はもともとイラスト方面にてんで脳が働かない人間なんですが、物語世界と自分との間に薄い紗がかかってるような感じでした。
 文章が雑というのは例えば、冒頭のベルニッチがでてくるシーン。「アモン」と「サイレンス」が専任係官の二つ名のようにはとても読み取れず、わりと中盤まで誰のことか分かりませんでした。あと「感情移入できない」と今書いて思ったんですが、このあたりにもしかしたら長谷さんの作品と相性よくない理由があるのかな。今までの作品でも大好きってキャラがいないんです。
 魔法の設定は興味深かったんですが、ストライクゾーンから微妙にはずれてました。「ウィザーズブレイン」とか「されど罪人は〜」と同じ理由かな。理詰めすぎて魔法じゃなくて技術なんですね。現代社会+魔法の組み合わせは私にとっては鬼門のようです。あからさまにプログラミングなウィザーズブレインと違って、円環少女では魔法の描写そのものはとても魔法らしかったはずなんですが全体的な雰囲気として幻想性はあまり感じられなかった。ここら辺の理由は後でつきとめてみると有用かな。